楽園のカンヴァス | あぁ、楽しや木版画!

2019/09/06 22:42

原田マハ『楽園のカンヴァス』が、とても面白かった。

アンリ・ルソーにまつわる小説です。現代と過去を行き来するミステリーでもあって、中盤から終わりにかけては、わくわくドキドキ…胸の中をかき混ぜられるような興奮。先が知りたい、でも終わってほしくない。1章、1ページを愛おしんで貪るように読み進めました。

今年に入って、ドキュメンタリーや啓発本、エッセイが続いたので、久しぶりに小説に入り込む喜びを味わいました。
貧しいということ、大衆に価値を認められない様子や虚しさ、それを上回るルソーの情熱。時代や立場こそ違えど、読んでいてこちらにも熱く胸に広がるものがあります。私自身もルソーの作品を好きだということが、余計にこの小説への思い入れを強くさせたと思います。ルソーの作品が絶賛されると小気味好く、嬉しくて。他にも、普段から芸術作品を感覚的にだけ観て「読み解く」ことをしない自分にとって、研究者たちによる作品の考察が新鮮で興味深く、うならされた。

とはいえ、西洋画にほとんど興味も知識も無かった私が、アンリ・ルソーを認識したのはつい今年の春のこと。ひょんなことから、ルソーの絵画をインターネット上で見る機会があり、見た途端、妙に惹きつけられるものがありました。手放しに大好きと言えるほど好みの絵というわけではないのですが、直感的な憧れと親近感を抱き、心をつかまれる感じがしました。
そんなとき、兄から「アンリ・ルソー、葉菜の作品と通ずるところがあるんじゃない」と唐突にメールが来て驚きました。「そう、最近ルソーを知ったんだけど、好きなんだ」というような内容で返すと、今『楽園のカンヴァス』という本を読んでいるとのことでした。その後貸してもらったまま手をつけることなく、先に読んだ母からも「面白かったよ」と言われ、私もようやく昨日読み終えたのでした。

それにしても、ルソー作品、美術館できちんと見てみたい。少しの背景を知ることで興味は広がるものなんだ。
次の本に行く前に、もう少し余韻を味わいたい、そんな気持ちにさせる一冊でした。