2019/11/02 19:44
10月最後の日。「早く終わらせなくちゃ、終わらせなくちゃ」と、ずいぶん前から思いながら、ほんの少しずつしか進められなかった頼まれごとの版画が、ついに出来上がった。ご褒美とかこつけて銭湯へ。午前中はアルバイトも3時間勤めてきたので、何がなんでも今夜は銭湯でゆっくり時を忘れるのだ。
番台のおばさんとは挨拶くらいしかしないけれど、もう立派に顔見知り。回数券を1枚渡し、「はい、行ってらっしゃい」と優しい声掛け。ボコボコと泡立つジャグジー風呂に浸かりながら、毎回、ここは天国かと思う。寒くなってきたので余計にありがたい。
近頃、焦って作る作品は途中でミスをするか、イマイチ思い通りに進まない。
今回の作品も、長い時間かけて用意した何色もある版を、数日前に1日で刷り上げてしまおうと前のめりになっていた。初めのうちは歌を歌いながらノリにノッって刷っていた。何版か重ねていくうちに何かがしっくりこない、何だか不安になってきた。でも今日仕上げるんだ。だんだんやっきになって進めるも、ついにモヤモヤは確信に。このまま刷っても失敗に終わる。おまけに目がチカチカしてきた。刷り始めから3時間ほど経った頃、そう認めて手を止めた途端にドッと疲れが出た。身体がずっしり重い。焦っても良い作品は出来ないな。
結局別日に彫り直しと、刷り直し。焦ったせいで遠回りすることになり、自分への苛立ちが無くもなかったけれど、これは本当に良い教訓だったと妙に納得する気持ちが強かった。完成した夕方の解放感は泣きたいくらいだった。
気付けば11月。バイト先ではクリスマスソングが流れていた。
木版画「一目惚れ」2016年