いらっしゃいませ | あぁ、楽しや木版画!

2020/01/16 22:55

6年使っている財布が古くなり、買い換えたくてデパートやセレクトショップを周って歩いた去年の暮れ。
頼むから世界中の財布を一箇所にまとめて見せてくれ、と思わずにはいられないほど、気に入った財布って見つけづらい。私の場合は。

期待はせず、新宿京王デパートの財布売場にも行ってみたときのこと。
「色々お手にとってご覧くださいまそ〜」
まそ…?そう聞こえた気がして、棚に並ぶ財布から視線をチラリと店員へ。制服に身を包んだ、5、60代のベテラン風女性店員だ。気を改め、引き続きキラキラとした財布を見るともなく見ていると、再び耳に入る、なめらかな呼びかけ。
「いらっしゃいまそ〜。色々お手にとってご覧くださいまそ〜。」
たしかに「まそ」と言っている。心の中で私も繰り返す。まそぉ。
売り場には他にも少し暇そうにしている店員が数人居たのだが、彼女らにはどう聞こえているのだろう。
デパートにはあまり好みの財布が無く、結局同じ財布のまま年を越した。

そんなそら耳の記憶などとっくに消えていた年明けのレジ打ちアルバイト。
なんと、自分の掛け声の語尾が「まそ」に聞こえてくるではないか。
「いらっしゃいまそ。お預かりいたしもす。」
「ませ」は「まそ」に、「ます」は「もす」に。
「お会計、◯◯円頂戴いたしもす。」
「またお越しくださいまそ。」
冗談じゃあない。一度そう聞こえ出すと、さあ困った止まらない。
京王デパートの魔法、というか呪い、なのか…。
いやいや、原因は滑舌か。しっかり、ハッキリ言おうと心がけ、語尾も強まる。
いらっしゃいマセ!いたしマス!

ついでに言えば「ポイントカード」も「ポンタカード」に聞こえてならない。
もともと私は声も小さめなので、滑舌が良くないと、理想的な店員にはなれないな。
そういえば、普段も喋っていると口の中がよだれだらけになってしまうのは、あれはどうしてなんだろう。

でもね、もう大丈夫。数日働いたら聞こえ方も元どおり。混んでレジに客が並ぶと、そんなこと考えていられんのですわ。
正月ボケみたいなものだったのかな。財布、また探しに行こうっと。


木版画「ずんぐりむっくり」2019年