2020/03/27 15:28
先月、引越をした。最初の更新も待たずして。
理由はいくつかあるのだけど、一番の問題は隣に住む男性の怒鳴り声である。古い木造アパートだったので、文字通り「隣の部屋」というくらいよく聞こえた。
「はぁ?!」「もうふざけんなよマジでおい!」
字にすると急に迫力がなくなってしまうなぁ。夜遅く初めてこれを聞いたとき、お願いですから隣ではありませんように、そして一度きりのことでありますようにと布団の中で祈った。が、怒鳴り声はそこから週3、4日のペースで夜から朝まで聞こえるようになった。電話でだれかに怒っているのかと思いきや、どうやらゲームらしい。この隣人の声は太く低いので、まるで地鳴りのように響いた。聞こえるたびに心臓がビクついて、そのうち胃がズンと重くなった。
その後、斜め下に住む酒乱の女性の荒れぶりにも辟易し、次の部屋を探し始めた。
このとんだ災難は転居で解消されて、ようやく落ち着いた生活を取り戻した。安心感の偉大さたるや。それだけで十分と思える。
ところで、実はこの問題、当時の私としては少し笑える部分がほんのひとつまみ程度あった。それは、この男性の悪態のバリエーションの無さである。前述の「はぁ?!」「もうふざけんなよマジでおい!」の2つ、これを延々と繰り返している。一度、「ウォーーー!!」と怒る猛獣のように雄叫びをあげてコントローラーを投げつけた(ような音がした)ことがあって、私は壁越しに縮み上がったのだけれど、基本は「もうふざけんなよマジでおい」だった。
違う言い方は無いんかい!と、疲弊していく心の隅で何度もツッコミを入れた。そこに焦点を当てると、小さくこみあがってくるような面白さがあった。でも、やっぱり同じフレーズのリフレインはキツかったな。
かくいう私も、怒りや苛立ちを表現する語彙力が隣人レベルに低い。ここ数年の不誠実なニュースをテレビなどで見ながら出る言葉は、「マジでなんなの」か「なんなのマジで」である。言いながらひどく幼稚な気分になる。あとは「ふざけんな」の頻用。品も無い。何か他の罵詈雑言は無いものか。ふと思い出したのはこの間テレビ番組のコントで見た「クソブタヤロー!」というセリフ。極々単純ながら少し気に入った。これだって幼稚で下品だけど。愛嬌があるような、ないような。
あーあ、罵詈雑言なんて出来れば耳にしたくないし使いたくもない。
そもそもクソブタヤローなんてどんな場面で使うのか。
せめてミュージシャンに歌にでもしてもらって、「クソブタヤロー!」と大勢で歌うくらいが良さそうだ。理不尽な目にあったこと、すっ飛んでいくかもしれないね。
木版画「夜が来たら寝るの」2018年