2020/05/01 13:38

 私が20代の終わり、人生のどん詰まりで途方に暮れていたとき、カナダに住む日本人の知人女性から励ましの手紙が届いたのですが、手紙の最後に英語で I am thinking of you と書いてあり心がジワンとなりました。その人は学生のときにカナダに渡って以来ずっと向こうで暮らしており、私が初めて知り合ったとき、パートナーも外国人、娘たちとも英語で話していたので、見るからに英語脳で思考しているようでした。
 私への手紙はもちろん日本語ですが、最後のこの一文は、きっと日本語ではどうしてもうまく表現しきれなかったんじゃないかと想像します。「あなたのことを想っています」と日本語ではっきり書いてあると、妙に照れ臭いし、英語のあの軽やかでありつつ愛情深い感じと少し違ってしまう気がします。
 外国で日常的に使われる表現って、日本語に直訳するとなんともこっぱずかしいものが多いですよね。実際に私も英語圏を旅行中、Love you, my son とか、Thank you for being my sister などと言って手を取り見つめ合うような人たちを何度も見ました。英語のこういう直接的な愛情表現って、私は結構好きです。というか、そうやって伝え合っている人たちを見るのが好きです。素敵だなと思う。

 はぁ、気付けば5月。まるで実感のあったような無かったような春が終わっていくんですね。いろんなの人たちのことを思い浮かべながら。
 昨日の夕方散歩中、前から歩いてきた老夫婦(夫婦じゃないかもしれないけど)のおばあさんが、ちょうど私とすれ違うとき、横を歩くおじいさんに「じゃあ明後日は何食べたい?」と聞いていました。今日の夜何食べたい?も、明日の夜何食べたい?も話し終えたその先の「明後日」だったのでしょうか。微笑ましく思いました。でも、食材のやりくりなど今は誰にとっても異例の日々なのでしょう。老夫婦も私も、周りを歩くほとんどの人がマスク姿であるのも同じですね。


リノカット 2020年