2020/11/24 15:03

 『それぞれのそれぞれ』という小冊子を作りました。
 冊子って良いもんだなぁと思います。なんとか自分の力で作れて、本棚の隅で、存在感はあんまり無いけど、場所も取らないし。2017年に作った『あぁ、楽しや木版画!作品集』もそう。あの作品集、何か行き詰まったときにふと手にとって見返してみると、励まされるんですね。2005年制作のものから載せているので、しみじみ、私もよくやってきたなぁ、間違いではなかったなぁって。なので、そんなふうな、自分を支えてくれる確かな冊子を少しずつ増やしていけたら嬉しいと思っているんです。

 『それぞれのそれぞれ Vol.1TacoTime』は挿絵が入った読みものです。版画はありません。私が慣れない絵を描いて拙い文章と一冊にまとめたところで、人に面白いと思ってもらえるのか気がかりでしたが、徐々に形になっていく楽しさはコロナによる自粛期間の励みになりました。当初はフリーペーパーとして気軽に手にとってもらおうと考えていたものの、出来上がった冊子は予想していたより厚みもあり、愛おしさもあり、悩みに悩んだ挙句、220円で販売することに。
 ところが、いざ販売開始のお知らせをしてみると、なんだか急に、私はとんでもなくトンチンカンなものを刊行してしまったのでは、ととても不安になりました。そこから一週間ほどは、毎晩寝る前に冊子を読み返さずにはいられませんでした。布団にくるまって、表紙から一ページずつ初めて読むつもりになって。入稿前もあれだけ繰り返し読み直した文章なのにも関わらず。不安が先立って話が頭に入ってこない夜もあれば、納得して読み終える夜もありました。
 でも、結局は「作りたかったから作った」と初心に返る以外、これといった不安の対処法も無いので、今ではようやく気持ちも落ち着きました。

 この「やりたいことはやったの?」という自問自答はいろんなシーンで応用しています。ちょっとした後悔や心配事に悶々とし過ぎるようなときに有効で、「うむ、やりたいことはやった。じゃあ、まあ、それが全てだね」と。諦めとも言えるかもしれませんが。

 文章を書くのにも絵を描くのにも、自信は無いです。私が一番大切にしているのは版画での自己表現。それが一番好きだから。それでも、精魂込める版画制作を今後も長く健全に続けていくために、自分にはこういう寄り道が必要なのかも。そう気付かされた冊子作りにもなりました。

 なんやかんやと慌ただしい日々のなか、わざわざ時間をとってこの小冊子を読んでいただいた方々には心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

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