2022/04/29 08:00


シンガーソングライター、前野健太さんのサイン会に行きました。
以前、友人からお誘いしてもらい、画家の小林敏也さんのトークショーに行った際、私も便乗して列に並び絵本にサインをいただいたことがあります。あと馬喰町バンドにも、ライブ後、アルバムにサインを書いていただいたことがあります。
ひとりでサイン会に並ぶのは今回が初めてですが、当初は行く予定ではありませんでした。

前野さんのニューアルバム「ワイチャイ」をタワーレコード新宿店で購入すれば、店内でのミニライブ参加券、さらにはサイン会の特典券が付いてくる、という情報を初めて知った夜、PCの前で頭をかかえて本気で迷いました。
うわ〜行きたい。でも無理無理、あがり症の私がスターの目の前に立つなんてこと。あんな蛍光灯の明るい店内で。緊張で震えるよ。
でも行きたい、でも行けない…
数日後きっぱり諦めて、最寄りの別のレコード屋さんで購入したのでした。

イベントの日。今夜8時かぁ、と日中悔やみながら版画の摺り作業をしていたら、行っちゃおうか、また買っちゃおうか、とワガママなアイデアが浮かんで、ふくらんで。ライブに間に合わなくても、サイン会に参加してみたい。
ええい、もし明日何かあって死ぬとしたら、今日行かない手はない、と最強の言い訳を持ち出して。
やれやれ、結局行くなら最初から新宿店で買っておきなさいな、ばかだねぇ、ばかだねぇ、と思いながら夕方バタバタ支度して新宿へ。2回目のCDを買いました。

ライブも観ることができ、元気が出て、わりあい余裕な気持ちでサイン会の列に並びました。
名前を入れてほしい場合は特典券の裏にあらかじめ書いておくよう案内がありました。
列の先頭を見ていると、サインをもらうとき、透明のビニールシート越しに前野さんに声をかけ言葉を交わしている人が、結構います。私は何を伝えよう。
それなら、前野さんが若いとき好きでよく聴いていたという、ビートルズの「リアル・ラブ」、ジョン・レノンの「オー・ヨーコ」という歌がとても良かった、気に入って最近くり返し聴いていることを伝えたい、と思いました。

ところが、いざ私の順番が巡ってきて前野さんに向き合ってみると、震えこそしませんでしたが、言葉が出てきません。ひとことも、一文字も。「リアル・ラブ」の「リ」が、喉に詰まって出てこない。
そのままサインを受け取り、ほとんど音にならない声でお礼を言って小さくお辞儀をして終了。
これが私の限界か、予想を上回る不甲斐なさに茫然自失の帰り道。

でもでも。
ライブが観られたでしょ。スターの声を聴けたでしょ。良かった良かった。よくやった。
自分の名前が新たに書かれたアルバムジャケットをまた部屋の棚に立てかける。
「葉菜さん江、前野健太」
サインって、それ自体はもともとそんなには興味を惹かれるものではなかったのですが、こうして眺めているとやっぱり良いもんだなぁと思います。誰かのサイン会に行ったことはあるか、いろんなひとに聞いてみたい。

アルバムは最高で、買った2枚目は贈り物にするつもりです。