2022/11/04 18:10
当日券で観に行くことが出来た先月のマエケンのイベントは、マエケンが今までどんな歌手のどんな歌に影響を受けてきたかを、実際に曲を流しながら、ときどき弾き語りも交えて話すというものだった。
私は音楽を聴くのが小さい頃から大好きだけど、好きな歌を好きな歌たらしめるものは何なのか、突き詰めたことはない。
いつでも私の脳に一番最初に到達するのはメロディーで、あとは声の響き。その他のことは長い間あまり気に留めてこなかった。
もちろん、このフレーズが好きだなと思う歌詞はあっても、私にとって歌詞は曲を口ずさむために必要な、ことばの連なりというだけだったかもしれない。
どうやら音楽ってもっともっと幅広い味わい方があるらしい、と思うようになってきたのはここ数年のこと。
マエケンが詩や歌詞のことをよく話したり書いたりしているので、なんなんだろうと、何があるんだろうと思って、少しずつ興味を持つようになった。
ライブだってそう。以前は、歌手は前日までにそれこそ歌詞さえ覚えておけば、今考えれば失礼な話ですが、あとは当日歌うだけ、と思っていた。本番も、CDと同じように歌ってくれたらそれだけで満足だった。
実際は、曲順を練り、練習し、MCを考えて、きっと機材のあれこれとか、心と身体の照準をライブの日に当ててとか。もろもろの段取りがあって尚、当日会場には観客の熱も充たされて、その栄養を吸い上げながらその場で生まれるのがライブなんだなと。
歌詞もそうだけど、目には見えないもののふくらみを知るようになった。
主催者がマエケンにウィスキーを用意して、飲みながらスタートした件のイベント。
始まりからなんとなく予感はしたが、最終的にマエケンはソファーにもたれてギターを抱きしめ、酩酊してまった。
なかなか歌い出さずに同じ話を繰り返すマエケンと、あたたかくも痺れをきらした会場全体の空気。十分過ぎるほど面白かったし、ハラハラもした。呆れたおじさんだ。
「風船おじさんの夢」という版画をずいぶん昔に作ったけど、「酩酊おじさんの夢」というのも、いつか時間ができたら作ってみたい。今朝そう思った。