2023/02/06 22:07

昨朝、ゴミを出しにマンションの階段を下りていくと、階下の廊下に一粒の煎り大豆が落ちていた。

あ、鬼は外。このマンションに豆まきをした人がいるのかと、ちょっと嬉しくなった。

この一粒の発見は今日のハイライトだな、とか思った。


本当のハイライトはしかし、一日の終わりに待っていた。


夕暮れに電車に乗り込んで、空いた車内のシートの中央に座って、電車が動き出す。

ホームを抜けると突如、目の前にパッと明るい大きな丸が現れた。まんまるい月が。

薄紫の空のまだ低いところで黄色くくっきり際立って、嘘みたいにきれいだった。


満月は今日。だから昨日もほぼ満月。

まるい月はどこから見てもいつ見ても、ちゃんとこっちを見てくれているように見えて、嬉しい。


ビルと家々の合間に、チラ、チラ、パッ。

とても短く、とても贅沢な時間だった。




「まるいと嬉しい」木版画 2019年