2023/04/25 08:50
熊本県八代市にて個展開催中です。5月2日まで。
別室も合わせて30点ほど展示しています。
とても濃厚な約5日間を過ごしてきました。
会場の珈琲店ミックさん、これがまた地元の人に愛される本当にいい喫茶店で。
歴史あり、気品あり、でも全然堅苦しさがなく、雑多な面もあり居心地が良く。
次々来店する常連さんが手作りジャムやら庭の切花やらお土産を毎日のように持ってくるのだそう。
マスターもスタッフの皆さんも常連さんも、非常に強い個性を放っていました。いやぁ、面白かったです。
展示を企画してくださった麻衣さん(マスターの娘さん)からは街の文化喪失の危機の話や、八代ゆかりの画家の話などたくさん聞きました。
シベリア抑留体験を描いた久永強がミックと深い親交があったというのも驚きでした。
私は久永強のシベリアシリーズは2年前に世田谷美術館で初めて目にし、深く心に残っていたのでした。
結局3日間在廊して、たくさんの人と言葉を交わしました。
普段こんなに人と話すことが無いので、アドレナリンがたぶんいっぱい出ました。
毎日カウンターの端の席に座らせてもらい、展示の会計係をし、コーヒーとランチをいただき、水もたくさん飲みました。
夜には温泉でトロトロになりました。
球磨川の景色も良かったし、山が近かった。
ご褒美みたいな旅でした。
新幹線と飛行機といつもの電車を乗り継いで家に帰ってきたら、八代の肌触りみたいなものは幻のように消えていってしまいました。
ただ、印象に残ったいくつかの記憶の断片がしっかり体内に沈んで積み重なって。
後々その中から「今だな」というものを「今かな」というタイミングで取り出して、組み合わせたり空想をプラスしたりして版画になるのだなと。自分でも再認識。
年月かけてすでに幾層にもなっている記憶の断片集の中から、実際に版画にできる数なんて極々限りあるわけで、最近はそれを少し寂しく思ったりもします。