2024/01/11 23:00

最近ワイアレスイヤホンを使い始めた。人生初ワイアレスイヤホン。

兄が買い替えで不要になったというのをくれたので。

お下がりというには贅沢すぎる。

音はあんまり良くないよと言われていたが、私の使っていたものより断然良かった。


もらったイヤホンはなぜか、5秒おきに青白く点滅する。

私は両耳に小さな光をチッカチッカ灯して、ロボットか宇宙人か衛星か何かにでもなった気分で街を歩いている。


部屋を出て外を歩きながら聴く音楽は格別である。

自分だけの世界にどっぷりと。アイデアを思いつきやすい、考えがまとまる、逆に何も考えなくてすむ、とか色々。


両耳にイヤホンをするというのは、周囲をシャットアウトしてバリアを張るような行為でもあるわけで、その間何か素敵な偶然や運命の出会いをみすみす逃していることになりやしないか、という気がしないでもない。


たまに、イヤホンなど見えないとばかりにバリアを易々と飛び越えてくる人たちがいる。

いつかの春、白い有線イヤホンを耳に差し音楽を聴きながら、桜の木に近づいて花の写真を撮っていた。

向こうから黄色い帽子を被った小さな男の子と女の子がおしゃべりしながら歩いてくる。桜を見上げながら「きれいだね」「白いね」とか言い、通り過ぎざま元気よく「こんにちはー!」と私に挨拶していった。そのままテクテク遠ざかっていった。


または夏の日、イヤホンを差しサングラスをかけ歩いていたところ、横断歩道のど真ん中で前から来たおばあさんに突然何か話しかけられ、慌てて私は咄嗟にイヤホンではなくサングラスを外してしまう、ということがあった。ただ道を尋ねられただけだった。


相手の耳にイヤホンが差さっていようがいまいが、知ったこっちゃない。そうやって飛び越えてくる人たちはときどき現れる。

ときどき現れて、人間社会で暮らすことの面白みを私に思い出させてくれる。


だからまあいいか。私は音楽を聴き続けている。