2024/05/26 18:57

先日個展を終え、作品とグッズを詰めたダンボールがボン、ボン、ボンと部屋に戻ってきた。

開梱……する力が湧かないが、とにかくダンボールだけは一気にバラしたい。鎮座されると部屋が狭くなるから。

個展はだんだん体力勝負になってきた。二十代、三十代のときとはだんだん勝手が違ってきた。当然だけど。


今回は設営時に背中の筋をピキっと痛め、会期半ばに二度目のピキがきた。

電車内でリュックを前に抱え直したらピキっときて、ウッとなった。

そのまま原宿で用事を済ませるとピキの間隔がどんどん狭まって、そのたび動けなくなった。

明治通りでしばし途方に暮れる。


でも結局渋谷まで歩いた。痛みにはわりと強い方だ。

歩いては立ち止まり、ゆっくりゆっくり進む。老人や妊婦さんは普段こういう景色を見ているのだろうか。

横を流れるようにひっきりなしに人が追い抜いていった。


その夜、十数年ぶり人生二度目の金縛りにあった。

悪夢を見て目が覚めると全身が固まって動かない。全身が攣るような、そんな感じ。

自分の意思ではどうにもならない。それ自体も恐怖だが、どちらかというと私はお化けとかそういうのを恐れている。

霊感は全く無い。お化けを見たこともない。でも金縛りっていまにもお化けが出そうじゃないか。それが怖い。


目をギュッと瞑ろうとしても薄目になってしまう。押さえつけられた身体の横に、お化けが居るに違いない……。

でも居ないようだ。こんなにも居そうなのに。

自分を怖がらせているのは自分以外の何者でもない気がした。

怖いもの、見たくないものを、私はわざわざ探しているような気さえする。


ちなみに人生初の金縛りはニュージーランドのウェリントン滞在時だった。

インド人夫婦とその娘、三人一家のお宅の一室を間借りしていた。

部屋の中で白い息が出るくらい寒い家で、私は毎晩、お湯を入れたペットボトルを足に挟んで寝た。


そのときも、悪夢から覚めると全身が攣るように固まって、目だけは開いた。

これが金縛りか、という変な興奮もあったが心底怖かった。体がギュウっと動かない。声も出ない。

寒い部屋の中で、すごい量の汗をかいた。

お化けを恐れたが、お化けは居なかった。

金縛りのメカニズムはよく知らないが、見えているものは実は全て夢の続きなのかもしれない。


ダンボールを開け、戻ってきた作品から二つほど選んで部屋の壁にかけた。とてもいいじゃないか。


五月は窓を開け放つ。強風の日は別として。

キジバトの鳴き声、ポワッパパーポーが耳に心地よい。日常が戻ってきた。


個展「日が昇る」、たくさんのご来場誠にありがとうございました。