2024/07/29 22:18

暑中お見舞い申し上げます。


午後5時ごろ図書館から駅へと歩くと、U字型のバスロータリー沿いに人だかりができていた。

バスやタクシーに並ぶ列というのではない。

人だかりというより、主に二、三人連れが散り散りと点在している。よく見るとひとりで佇んでいる人も少なくない。


なんだろう? と思わせたのは、その人たちが遠くの空を見るような角度で皆同じ方角を見つめていることだった。

空にきれいな夕焼けなどはない。


バスロータリーに面したのビルの中階に何かあるのだろうか。

もしかして撮影? ドラマの撮影? 

私は極力ゆっくり歩いて遠くに撮影陣を探してみたが、見当たらなかった。


というか撮影ならもう少しキャッキャした好奇の雰囲気がそこに感じられてもいいはず。

どちらかというとその場にはちょっとした緊張感が漂っていた。


事件なのか? 

急に不穏なものに感じられ、今一度人々の視線の先にパトカーや消防車が無いか探してみたがそれも見当たらなかった。


なんだろう。たまらず、端っこのほうに立っているひとりの女性に声をかけてみた。同年代くらいか。


「すみません、何を見ているんですか?」と直球で尋ねると女性は、


「あの…こどもたちが…」と答えながら思わずという感じで半分笑い出した。


「サッカーの遠征から帰ってくるんです。そのバスが向こうから来るので、それを待っているんです」と。

拍子抜けして私も笑いが込み上げた。


「さっきも人に聞かれて、これで二人目です、聞かれるの」と言うのでさらに笑えてくる。

少しの間ふたりで笑いあった。


「すみません紛らわしくて」と気を遣ってくれ、感じのいい人だった。

お礼を言って私は立ち去った。


なあんだ、も〜、恥ずかし恥ずかし。私という勘違いの野次馬は。

ああ、可笑しかった。

駅の改札通りぬけながら思う。


夏の遠征に行っていた我が子を迎えに来ていた親御さんたちだったのか。

納得。あの場の空気感、全てが腑に落ちた気がした。