2024/11/07 10:35
10月初旬の日曜日。翻訳家で日本国際児童図書評議会前会長のさくまゆみこさんの講演を聴きに、町田パリオに行ってきた。
当日の朝偶然見つけた講演会だった。さくまさんは、私が絵を担当した絵本「おはなしはどこからきたの? 南アフリカのむかしばなし」(BL出版)のまさに著者で、お目にかかったことはなく、いつかお会いできたらと願っていた方である。
その日、朝食後のお茶を飲みながら、今日は美術館にでも行って刺激を受けてこようと思い立ち、いくつかの展覧会情報を覗いてみたのだがちょうどいいものが無かった。諦めかけた頃、ふと思い出し何気なく検索した町田パリオのホームページで、あっ! と発見したのがこの講演会だった。時間も間に合う、しかも参加費無料。
気まぐれに年に1、2度開くか開かないかのパリオのホームページを、さくまさんの講演会当日の朝に開いた、こんな偶然があるだろうか。いいぞいいぞ、引き寄せている。いい胸騒ぎがした。
普段講演会など滅多に行かないので少し勇気が必要であったが思い切って行くことにした。
予約もせずに直行。受付の方は快く迎えてくださった。町田の図書館活動をすすめる会主催とのこと。
『本を窓にして世界を見る』というテーマで2時間弱の講演。差別、戦争、マイノリティーが抱える困難、英米と日本の多様性の捉え方の違い、外国絵本の紹介、出版界の裏話、などなど。とても面白かったし勉強になった。
「生きのびるために、今こことは違う世界があるということを本を通して知る」というさくまさんの言葉に共感。大人がその窓をこどもに用意してあげること、というのは今まであまり意識してこなかったことで、そうか、私はもう大人側なんだよなあと。
こどもにとって「もっと他の人と同じじゃなくてもいいんだよと思える本があったほうがいい」というのも印象深く残った。それはもちろん本に限ったことではないだろうし。
この社会が抱える色んな課題は、つまりはそこに生きる自分に突きつけられている課題なんだと実感した気がする。自分の生きづらさに焦点を当て続けていても埒があかないことが多々あるけど、外に向けて変化を起こしていく、という転換も結果として自分が救われるひとつの手段なのかなと思えた。その明確なやり方が今はまだ見つからないけど。身の回りでひとつひとつ試していけることがあるような気がしている。
講演会後、荷物をまとめるさくまさんに震える声でご挨拶できた。とても気さくな方で、笑顔が印象的だった。
嬉しい偶然、嬉しい巡り合わせだった。