2025/09/07 16:40

住んでいるマンション入り口のゴミ拾いをすることにした。8月のこと。本格的じゃなく極々簡易的なゴミ拾い。


このマンションに住み始めて5年ほど経つが、ここ1、2年、使い捨てマスクやレシート、ティッシュなどなど、散らかるゴミが目に余るようになった。道ゆく人が捨てていくのか、風に飛ばされてくるのか。管理会社が変わって清掃がずさんになったなと、ただそう思って長いこと過ごしていた。


ある日の散歩中、隣り合う二つの戸建ての家の住人がそれぞれ、玄関先を箒で掃き掃除している姿を見かけ、昔ながらのいい光景だなと思った。それを見て、賃貸とて、自分の住むマンションは自分の家だよなあと気付かされた。当たり前といえば当たり前だけど、そんなふうに思えたのはたぶん初めてだった。管理会社の清掃は月に一度あるかないか。その間は、出来ることは自分ですればいいではないかと思うようになった。


それとは別に、今年はなんだか特に、誰に会うときもグチや不安ばかりが口をついて出てきてしまい、そんな自分に、そんな状況に少し嫌気がさしていた。気持ちの切り替えが必要だと身体が本能的に察知したのか、8月のある日突如奮い立って、家の掃除を始めた。風呂と台所の排水溝、トイレ、玄関、靴置き場、ベランダ。四角い部屋をまぁるく掃除する自分なのでどこも雑にではあったが、それなりにきれいになるし、掃除を終えたあとの気持ちは正真正銘に清々しかった。風通しがよくなった気がした。


今だ。今しかない。その勢いで、マンション入り口のゴミ拾いを決行することにした。

百均に向かい、アウトドアコーナーからトングと、ゴミを入れる小さなポリ袋を調達した。家に帰ってさっそく一枚ポリ袋を引き抜くと、とんでもなく縦に細長く、改めてよく見ると大根や長ネギ用の保存袋であった。まあいいか。

右手にトング、左手にポリ袋を持ち、サンダルつっかけて階段を降りながら、心がちょっと弾むようだった。自分で決めた何か新しいことを行動に移すとき、大なり小なり、勇敢な気持ちがわいてくる。コンニャロウ、きれいにしてやるぞ!


雑草が密集した箇所にゴミは集中している。手始めに、何のために置いてあるのかよくわからないカラーコーンを持ち上げると、その下に居たらしい大きなゴキブリが一匹慌てて飛び出し、道の向かい側へと一目散に逃げていった。あぁ、びっくりした……。

途端にやる気が萎えていきそうになるのをグッとこらえ、大丈夫、気を取り直して、淡々と執り行う。

ゴミをひとつひとつ掴んで、ポリ袋へ。これではきっと短いだろうなと予想していたトングは、やっぱり短かった。膝と腰曲げて、一歩一歩。大した数ではないがゴミが減っていくのが楽しかった。自転車が並び、どうしても手の届かないゴミはそのままにした。頑張らない。

ゴミの入ったポリ袋は小さく丸めて家のゴミ箱へ。やってみれば簡単なことだった。


そして今朝。秋の風が涼しげで、これはチャンスと二度目のゴミ拾いをしてきた。まるで当たり前のようにゴミはまた落ちている。

たった1、2分の簡易ゴミ拾いで景観はだいぶマシになる。手の届かないいくつかのゴミは今日も残したまま終えた。

マンションのガラスに映る自分を見ると、赤い縞々のTシャツ、赤い短パン、赤い靴下、そしてプラスチックの赤いトングを手に持っていて滑稽だった。そういうユニフォームみたいで、とてもいいじゃないか。